【フレームリレーについて】


このHPはフレームリレーの概要についてまとめたものです。


1-1 フレームリレーとは

フレームリレーとは、高速なフレーム交換のためのWANプロトコル。複数のデバイスが 物理回線を共有するパケット交換方式で通信する。 フレームリレーはデータリンク層で機能し、ほとんど全ての種類のシリアルインタ ーフェイス上で動作する。

ルータから送られたフレームリレーのフレームは交換機間では独自のパケット単位に分割され送信先へ転送される。



1-2 仮想回線(バーチャルサーキット)

フレームリレーでは、1本の回線で複数の拠点へのデーターを多重化して運ぶ。各拠点への 接続には 仮想回線(VC)といわれる論理的な通信 路が確立される。仮想回線(VC)はフレームリレーネットワーク内の双方向通信を可能にする。また、こ の仮想回線(VC)を増やすことで、より多くの複数拠点間で通信が可能となり、柔軟な構成に対応でき る。仮想回線(VC)には次の2つがある。

●PVC
●SVC

【PVC】

接続先を変更できないVC。接続先はフレームリレーサービスを契約す るときにあらかじめ決めておく。



【SVC】

1本のVCで接続先を変更できるVC。サービス利用時に選択して決める。





1-3 DLCI(データリンク識別子)

DLCIとは、VCを識別するための番号。フレームリレーのヘッダ に含まれており、フレームリレーサービスを提供しているキャリアから割り当てられる。フレームリレー交換機(スイッチ)はDLCIを調べてそのフレームをどこに転送すればよいかを判断する。



1-4 CIR

フレームリレーは一定の帯域幅を複数のユーザーと共有する。 従って、フレームリレー網内でネットワークが輻輳することがある。CIRはその場合でも最低限度保障される通信速度。PVCごとに設定ができ、回線が空いて いる場合はCIRを超える通信が可能。
しかし、輻輳時 はCIRで設定した帯域幅での通信速度の通信しかできない。

【輻輳通知】

フレームリレーではフレームリレーネットワークが輻輳していると きにフレームリレー網を使っているユー ザーに輻輳が発生していることを通知する仕組みがある。フレームリレーに実装されてい る輻輳通知は次の2つがある。

【●FECN】

順方向明示的輻輳通知。輻輳を検出したフレームリレー交換機(スイッチ)が宛 先ルータに通知する。フレームのFECNフィールドには1がセットされる。

【●BECN】

逆方向明示的輻輳通知。輻輳を検出したフレームリレー交換機(スイッチ)が送 信元のルータへ通知する。フレームのBECNフィールドには1がセットされる。このパケッ トを受信したルータは、フレームを送信する速度を下げたり、一時的に停止したりする。


1-5 フレームリレーカプセル化タイプの設定手順

送信するデータのカプセル化タイプをフレームリレーネットワーク内で転送できるカプセル化タイプに設定 する。カプセル化タイプには下記の2つがある。

●Cisco社独自の【Cisco】
●IETF規格の【ietf】

カプセル化タイプを設定するには、インターフェイスコンフィグレ ーションモードで【encapsulation frame-relay】コマンド入力し引数に、カプセル化タイプを指定する。カプ セル化タイプには、対向のルータがシス コルータであれば【cisco】、他社製ルータの場合には、必ず【ietf】を指定 する。デフォルトでは 【cisco】が選択される。


【カプセル化タイプの指定】
(config-if)# encapsulation frame-relay 【cisco/ietf】





1-6 LMIタイプの設定

LMIとはFRルータとFRフレームリレー交換機(スイッチ)との間で、制御情報を交換する プロトコルで、FRスイッチ ( DCE ) とFRルータ ( DTE ) 間のシグナリングの標準。LMIはキープアライブでPVCの状態を管理し、ステータスの保持等を行って いる。

LMIを設定する場合は、フレームリレー交換機が使っているLMIのタイプにあわせる。LM I タイプは手動か自動で割り振ることができる。IOS11.2以降のCiscoルータでは LM I タイプを自動検出 する事ができる。Ciscoルータでは以下の3つのLMI タイプをサポートしており、デフォルト値は「cisco」。

●cisco
●ANSI(AnnexD)
●q933a(ITU-T AnnexA)

【LMIタイプの指定】
(config-if)♯frame-relay lmi-type 【cisco/q933a/ansi】



1-7 フレームリレーマップ

ルータはフレームを送信する際にフレームリレーマップを参照する。フレームリレーマップとは、 対向ルータのIPアドレスと接続するVCの DLCI番号を対応づけたデータベース。 フレームリレーマップを構成するには、インターフェイスコンフィグレーションモー ドで【frame-relay map】コマンド を使う。引数には【プロトコル名】【ネクストホップアドレス】【ローカルDLCI番号】【broadcast 】(オプション)を入力する。

【フレームリレーマップの作成】
(config-if)♯frame-relay map【プロトコル名 】【ネクストホップアドレス】【ローカルDLCI番号】【broadcast(オプション)】

※broadcastオプションはこのインターフェイスからブロードキャストとマルチキャストトラフィックの送 信を許可するという設定。Inverse-ARPの場合は自動的にbroadcastオプションが設定される。

以下にルータAからルータBへのフレームリレーマップを静的に設定する。 ルータBのIPアドレスは192.168.2.3、DLCI 番号を10とすると、次の様な設定になる。

(config-if)♯fame-relay map ip 192.168.2.3 10 broadcast




1-8 Inverse ARPの仕組み

Inverse ARPはフレームリレーマップを動的に作成する機能。CiscoルータはデフォルトでInverse ARPをサポートしている。



Inverse ARPによってフレームマップが生成される仕組みは次のとおり。

@ルータは、ローカル のフレームリレー交換機(スイッチ)に、LMIでPVCが生きているか(アクティブか)、またPVCのステータスを照会するため LMIを送信する。

Aローカルのフレーム リレー交換機(スイッチ)がDLCI10のPVCがアクティブであることを通知するためのLMIをルータAへ送信 する。またルータBは DLCI20のLMIを受信。

Bアクティブとの返答 が返ってくるということは、そのPVCにのせて宛先ルータまでフレームを飛ばせるということなので、 これを確認してからInverse ARPがIPアドレスを要求するリクエストメッセージをリモートルータに送る。

CInverse ARPを相手側 が受け取ると、それを受信したリモートルータは、Inverse-ARPリプライメッセージで自分のIPアドレスを入れて返す。

Dリモートルータから のIPアドレスを取得したInverse-ARPは、ローカルDLCI番号とリモートルータから受け取ったIPアドレスをフレームリレー マップに登録する。

Eこの後もルータは引 き続きフレームリレースイッチとLMI情報を10秒置きに交換する(キープアライブ)。





2-1 フレームリレーのトポロジー

フレームリレーでは、次の3つの論理トポロジがある。

●ハブアンドスポーク(スタートポロジー)

中心となる拠点が全ての拠点と接続する構成。VCで直接接続されていない拠点が 発生する。



●バーシャルメッシュ

部分的な拠点間を相互接続する構成にし、残りをハブアンドスポーク型にした構 成。



●フルメッシュ

全ての拠点間をVCを使って直接に相互接続する構成。必要とするVCが多いため、 コストが高くなる。



2−2 NBMA環境でのフレームリレー問題

フレームリレーはNBMAという性質を持っている。ハブアンドスポーク(スター型)やパ ーシャルメッシュのトポロジでは、あるホストが送信したブロードキャストトラフィックは、同一ブロ ードキャストドメイン内のすべてのルータに到達するわけではない。

ハブアンドスポークの中心となっているル ータでブロードキャストトラフィックをコピーして転送する必要がある。 このような環境をNBMA(ノンブロードキャストマルチアクセス) という。



NBMAの環境では、ルーティングプロトコルのアップデート情報(ブロードキャスト)に大きく影響 する。それは、1つのインタフェース(もしくは1つのサブインタフェース)上 で、同じサブネ ットに属しているPVCが複数あるときに発生する。



2−3 ルーティングアップデートの影響

ルータの1つのインターフェイスで複数のサイトを接続している場合、スプリットホライ ズンによるルーティングループが問題になることがある。

下の図でルータAのS0/0にルータB、ルータCが繋がっていたとする 。ルータCからのアップデート情報は、ス プリットホライズンによって、S0/0から、ルータBへはアップデートが送信されない。同様にルータBか らのアップデート情報もルータCへは送信されない。

その結果、ルータBはルーターCが持っている経路情報を、ルータCはルーターBが持っている 経路情報を知ることができないので、ルータBとルータCの間で通信ができなくなる。



2-4 サブインターフェイスの設定

Ciscoルータでは、物理的な1つのインタフェイスを、仮想でいくつかのインタフェースに分けて、 あたかも複数のインターフェイスをもっているかのように動作させることができる。

分割する前のインターフェイスをメジャーインターフェイスという。分割した 論理的なインターフェイスをサブインタ ーフェイスという。サブインターフェイス番号には、1以上の数字を使う。



2−5 ポイントツーポイントとマルチポイント

サブインターフェイスには、次の2つのタイプがある。

■ポイントツーポイント

ポイントツーポイントは、ひとつのサブインターフェイスに対して、ひとつのVCを割り当てるタイプ。また 、サブインターフェイスごとにサブネットアドレスを割り当てる必要がある。この構成はハブアンドスポーク(スタートポロジー)などにおけるスプリットホライズンの 問題に有効。




■マルチポイント

マルチポイントは、ひとつのサブインターフェイスに対して、複数のVCを割り当てるタイプ。 サブネットアドレスを共通で使用できるためアドレス空間を節約できるが、スプリットホライズンの問 題は 解決されない。ただし、パーシャルメッシュ、またはフルメッシュなどで使う場合に有効。




2−6 サブインター フェイスの設定手順

フレームリレーでのサブインターフェイスは次の手順で作成する。

1.メジャー(物理)インタフェースからIPアドレスを削除

メジャーインターフェイスにIPアドレスが 設定されている場合、IPアドレスを削除する。メジャーインターフェースのIPアドレスを削 除するには、インターフェースコンフィグレーションモード に移行して【no ip address】コマンドを実行する。 メジャーインターフェイスにIPアドレスが設定されて いない場合、このコマンドは省略できる。

【メジャー(物理)インタフェースから IPアドレス削除】
(config-if)♯no ip address


2.メジャー(物理)インタフェースにカプセル化を設定する

フレームリレーでメジャー(物理)インタ ーフェイスをサブインターフェイスに分割するには、メジャーインターフェイスのカプセル化タイプを【frame-relay】に設定 しておく必要がある。
メジャーインターフェイスのインターフェイスコンフィグレ ーションモードで、【encapsulation frame-relay】コマンドを入力し、引数に【タイプ】を指定する。フレームリレーの場合は、【cisco】か【ietf】。

【メジャーインタフェースにカプセル化 を設定】
(config-if)#encapsulation frame-relay 【cisco/ietf】


3.サブインタフェースの作成とインタフェースのタイプを設定

サブインターフェイスを作成するには、 【interface】コマンドを入力し、引数に【インターフェイス番号】【メジャーインターフェイス番号】この後に「.」を打 ち、【サブインターフェイス番号(1以上の数字)】【タイプ】を指定する。 【タイプ】には、【point-to-point】か【multipoint】を指定する。

【サブインタフェースを作成】
(config)#interface 【インタフェース】【メジ ャーインターフェイス番号】. 【サブインターフェイス番号】【point-to-point/multipoint】


4.サブインタフェースに、VCとDLCIを関連付ける

VCの設定は、ポイントツーポイントとマルチポイントで異なる。

《ポイントツーポイントサブインターフ ェイス》

ポイントツーポイントサブインターフェイ スは接続するVCのDLCI番号を使って割り当てる。作成したサブインターフ ェイスのサブインターフェイスコンフィグレーションモードで、【frame-relay interface-dlci】コマンドを入力し、引数に【サブインターフェイスに割り当てるローカルDLCI番号】を指定する 。

●サブインタフェースへの、DLCIの関連 付け(ポイントツーポイントサブインターフェイスの場合)
(config-subif)#frame-relay interface-dlci【 ローカルDLCI番号】


《マルチポイントサブインターフェイス 》

マルチポイントサブインタ ーフェイスの場合は、フレームリレーマップまたはInverse ARPを使用する。フレームリレーマップを作成するには、作成したサブインタ ーフェイスのサブインターフェイスコンフィグレーションモードで【frame-relay map】コマンドを入力し、引数に【プロトコル名】【ネクストホップアドレス】【ローカルDLCI番号】【broadcast 】を指定する。

●フレームリレーマップの作成(マルチ ポイントサブインターフェイスの場合)
(config-subif)#frame-relay map 【プロトコル 名】【ネクストホップアドレス】【ローカルDLCI番号】【broadcast】


※broadcastオプションは 、ルーティングアップデートを複製して、同じ サブインタフェース上に接続されて いるルータにも届けたい場合に 必要となる。


5 IPアドレスの設定

サブインターフェイスのIP アドレスを設定する。IPアドレスを設定するには、【ip address】コマンドを入力し、引数に【サブインターフェイスに設定するIPアドレス】【サブネットマスク】 を指定する。

●サブインターフェイスのIPアドレスの 設定
(config−subif)#ip address【サブインター フェイスに設定するIPアドレス】【サブネットマスク】